ぶんかつブログ

黒田清輝と岡田三郎助。二人の交流の軌跡を佐賀で辿る

秋も深まり、実りの季節を迎えました。「芸術の秋」とも呼ばれますが、全国各地でさまざまな展覧会が続々とオープンしていますね。

このブログでは、佐賀城跡に隣接する佐賀県立美術館で好評開催中の展覧会「白馬、翔びたつ ―黒田清輝と岡田三郎助―」(~10/17まで)をご紹介いたします。


「白馬、翔びたつ」展 会場入り口

▷「白馬、翔びたつ ―黒田清輝と岡田三郎助―」の開催概要をみる

本展は令和3年度国立博物館収蔵品貸与促進事業のひとつで、黒田清輝筆「舞妓」(重要文化財)や岡田三郎助筆「傾く日影(雑草)」など、22件の文化財を東京国立博物館(トーハク)よりお貸し出ししています。なお本事業では、国立博物館が貸し出す文化財にかかる輸送費や保険料等を、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が負担します。

まずは、キービジュアルとなっている本展のチラシをご覧ください。


「白馬、翔びたつ」展 チラシ

重要文化財「舞妓」(黒田清輝筆、東京国立博物館蔵)と「あやめの衣」(岡田三郎助筆、ポーラ美術館蔵)を対比させていることからもわかるように、本展は、近代洋画の父と呼ばれる黒田清輝(1866~1924)と、佐賀県出身の岡田三郎助(1869~1939)の交流に着目した展覧会です。

フランス留学から帰国した直後の黒田との出会いをきっかけに、さらに画技を磨いた岡田は洋画グループ「白馬会」を結成し、黒田とともに日本近代洋画の新たな扉をひらきました。

佐賀県立美術館は地元出身の岡田の作品を、常設展示室「OKADA-ROOM」において紹介するなど、開館当初より一貫して岡田の顕彰活動を続けています。

▷OKADA-ROOMについてはこちら
https://saga-museum.jp/museum/exhibition/permanent/okada-room.html

岡田と黒田の出会いに注目し、二人の画業を対比して紹介する試みは、実は本展が初。佐賀県立美術館だからこそ実現した特別な展覧会なのです。


「白馬、翔びたつ」展 会場写真
(右)黒田清輝筆「舞妓」重要文化財、明治26年(1893)、東京国立博物館蔵
(左)岡田三郎助筆「あやめの衣」昭和2年(1927)、ポーラ美術館蔵

会場では本展のチラシと同様に、黒田清輝筆「舞妓」(東京国立博物館蔵)と岡田三郎助筆「あやめの衣」(ポーラ美術館蔵)を並べて展示しています。黒田と岡田。日本近代洋画を代表する二人の美の競演を、是非お楽しみください。

続いてご注目いただきたいのは、作品タイトルを同じくする岡田と黒田の「花野」です。


「白馬、翔びたつ」展 会場写真
(右)岡田三郎助筆「花野」佐賀県重要文化財、大正6年(1917)、佐賀県立美術館蔵
(左)黒田清輝筆「花野」明治40~大正4年(1907~15)、東京国立博物館蔵

黒田清輝筆「花野」(東京国立博物館蔵)は黒田晩年の大作として特に著名ですが、未完に終わった作品です。屋外の柔らかな光を浴びながら、花咲く野原に身を横たえる三人の裸婦。本作は、黒田がフランス留学中に師事した外光派の画家、ラファエル・コラン(1850~1916)の「庭の隅」(1895年、前田育徳会蔵)を援用して描いた作ではないかと指摘されています。

一方の岡田は明治30年(1897)に渡仏した際、黒田と同じくコランに就いて絵画修行に励みました。岡田の「花野」もまた、師・コランの「眠り」(1892年、パリ・芸術家財団蔵)を思わせる構図であることが知られています。コランの「眠り」は黒田にも多大なる影響を与え、黒田清輝筆「野辺」(明治40年〔1907〕、ポーラ美術館蔵)制作のきっかけにもなったとされています。

共通の師であるコランの作品に深く傾倒した黒田と岡田。二つの「花野」を見比べることで、二人が学んだもの、そしてそれぞれが拓いた洋画の道が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

会場では、黒田清輝筆「花野」の画稿も併せて展示しています。画稿を通して、黒田が構想した「花野」の原点に触れていただければ幸いです。


黒田清輝筆「花野」明治40~大正4年(1907~15)、東京国立博物館蔵


黒田清輝筆「花野 画稿(Ⅱ)」明治40年(1907)、東京国立博物館蔵

展覧会の魅力はまだまだ語り尽くせませんが、最後に、本展をご担当された佐賀県立美術館学芸員の秋山沙也子さんよりいただいた「展覧会の見どころ」をご紹介いたします!

本展の見どころについて、担当学芸員の秋山沙也子さんから
日本近代洋画の輝ける時代を築いた、黒田清輝と岡田三郎助という二人の洋画家の交流と軌跡を紹介する初めての展覧会です。明治日本の人々に衝撃を与えた、黒田と岡田の明るく瑞々しい色遣いは今も色褪せていません。感染症の拡大などで不安が多い世の中、ぜひ多くの方にお楽しみいただきたい展覧会です。


「白馬、翔びたつ」展 会場写真
第5章 それぞれが拓いた道、それぞれが残したもの ―黒田清輝と岡田三郎助―

岡田三郎助と黒田清輝の傑作が、岡田の故郷・佐賀に集結した本展は10月17日(日)まで。二人が求めた美の世界を、どうぞご堪能ください。

※本ブログ掲載の会場写真はすべて、佐賀県立美術館よりご提供いただきました。

白馬、翔びたつ ―黒田清輝と岡田三郎助―

2021年9月7日(火) ~ 2021年10月17日(日)

佐賀県立美術館(〒840-0041 佐賀市城内1-15-23)

※展示室内では、一部の作品のみ写真撮影が可能です。

公式サイト https://saga-museum.jp/museum/

公式facebook https://www.facebook.com/sagahakubi/

展示作品リスト

カテゴリ: 文化財の貸与