群馬県立歴史博物館で埴輪の甲冑体験
複製品や先端技術を使った文化財の活用を各地のミュージアムで展開する文化庁の委託事業。今回は3月6日(土)・7日(日)に開催された群馬県立歴史博物館の「国宝武人埴輪なりきり撮影会」をご紹介します。
武人埴輪から再現した体験用甲冑(大人用と子供用)
このワークショップは、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が文化庁から委託を受けた「令和2年度 地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」の一環として行なわれるもの。東京国立博物館〈トーハク〉が所蔵する国宝「埴輪 挂甲の武人」をもとに、〈ぶんかつ〉と〈トーハク〉が協力して新たに制作した、体験用甲冑を着て記念撮影をしていただくという期間限定の特別企画です。大人用(170cm程度)と子供用(140cm程度)があるので、親子で楽しめます。当日は来館されたたくさんの方々に、着用を体験していただきました。
大の古墳好きという男の子とお父さん。黒い甲冑が似合います。
埴輪ファンの男の子とお父さん。ポーズが決まっていますね!
この体験用甲冑の元となった国宝「埴輪 挂甲の武人」は、群馬県太田市から出土したもので、6世紀の東国の武人のいでたちを知ることができる貴重な資料です。NHK教育テレビ『おーい!はに丸』の主人公「はに丸」の造形モデルになった作品としても知られています。詳しく知りたい方は、ぜひ「e国宝」・「ColBase」をご参照ください(展示予定は未定です。e国宝とColBaseでの掲出画像は修理前のものです)。
(左)国宝「埴輪 挂甲の武人」の原品
(右)原品をかたどった樹脂製レプリカ
会場では、これを忠実にかたどったハンズオン用の樹脂製レプリカも一緒に展示しました。本来であれば直に触っていただく予定でしたが、コロナウイルス感染防止のため今回はおあずけ。
武人埴輪の原品を見てみると、顔を守る頬当てと後頭部を守る錣(しころ)が付いた、日本列島独自の形のかぶとをかぶっていることがわかります。かぶとの鉢の部分には粘土の小さな粒が貼り付けられていますが、これは鉄板を組み合わせ、鋲(びょう)でとめて作られていることを忠実に表現したもの。また体を覆うよろいも、小さな鉄板をあわせて作られていたことが見て取れます。
(左)武人埴輪原品のかぶと
(右)着用体験用甲冑のかぶと
今回新たに制作した着用体験用甲冑は、このような「埴輪で表現されている甲冑」に合わせて造形化しました。頬当てや錣は革で再現し、鉄板を打って成形したかぶとには鋲もしっかり表すなど、随所にこだわりポイントがちりばめられています。よろいも薄い鉄板を使用しているため、実際に着用してみるとズッシリと重いのです。
ワークショップに参加された方からは、「とにかく重かった!」というご意見もいただきましたが、その分、古墳時代の甲冑の雰囲気を味わえたという感想もたくさんいただきました。
埴輪に表されている武器も再現しています
腰に差した長い大刀(たち)や、左手に持った弓など、埴輪で表現されている武器もちゃんと再現しています。埴輪の左手首には、弓を引くときに手首を守る鞆(とも)が表されていますが、これも赤い色できちんと造形化しました。
(左)武人埴輪原品の背面
(右)着用体験用甲冑の背面
こだわりポイントはほかにも。埴輪の背中を見てみると、4本の矢が入った靫(ゆき)を背負っているのがわかります。着用体験用甲冑でもこれをきちんと再現し、フックで装着できるようにしました(安全性を考慮して、矢は抜けないようになっています)。
キュートな馬の埴輪のイラスト
ちなみに撮影用のバックパネルも〈ぶんかつ〉で用意しましたが、イラストはなんと、群馬県立歴史博物館の職員の方が描いたもの。人なつっこい馬の埴輪がとってもキュートです。
群馬県立歴史博物館 外観
群馬県立歴史博物館は、JR高崎駅東口からバスで約25分。自然豊かな「群馬の森」の中にあるので、春の行楽シーズンにぴったりです。「群馬の森」の駐車場もご利用いただけるので、お車でもご来館いただけます。
春の特別展示「新・すばらしき群馬のはにわ」
また、現在は春の特別展示「新・すばらしき群馬のはにわ」(~5月9日まで)が開催中。「日本一の埴輪県」といわれる群馬県が誇る、選りすぐりの埴輪たちがズラリと並ぶ様子は圧巻です。〈トーハク〉所蔵の群馬県出土埴輪8点も里帰りしています。会場内は写真撮影も可能なので、お気に入りの埴輪のベストアングルを探してみてはいかがでしょうか。
今回ご紹介した「国宝武人埴輪なりきり撮影会」も、下記の日程で第2弾が開催されます。
古墳時代の甲冑体験が味わえる今だけのチャンスです。ぜひふるってご参加ください!
国宝武人埴輪なりきり撮影会
日時:2021年3月27日(土)・28日(日)
10:00~12:00、13:00~15:00
会場:群馬県立歴史博物館ホール(〒370-1293 群馬県高崎市綿貫町992-1)
受付:当日会場で受付(午前6組、午後6組程度)
※終了時刻前でも、希望者多数の場合は受付を終了します。
関連展示「新・すばらしき群馬のはにわ」
会期:2021年2月27日(土)~5月9日(日)
9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)
料金:一般600円/大高生300円/中学生以下無料
※入館は事前予約制です。詳細は群馬県立歴史博物館ウェブサイトをご確認ください。
群馬県立歴史博物館ウェブサイト http://grekisi.pref.gunma.jp/index.html
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- 2021年03月25日 (木)