ぶんかつブログ

ColBaseの古写真でタイムトラベル!

つい先日2023年を迎えたと思いきや、もう3月。桜が満開になるのが待ち遠しい今日この頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
今年1月のブログでは、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が運営する「ColBase (コルベース/国立文化財機構所蔵品統合検索システム)」[https://colbase.nich.go.jp/] について、作品画像が撮影されてからColBaseに掲載されるまでの流れをご紹介しました。

▷関連ブログ「ColBaseの舞台裏 デジタルの裏側はアナログ?」の記事を読む

今回のブログではColBaseに画像が掲載されている約3万件の文化財のなかから、明治時代に撮影された古写真に焦点をあて、タイムトラベルをしてみたいと思います。

〈沖縄〉
まずは、明治時代の沖縄へ行ってみましょう。


R-220「琉球首里城」(守礼門)2000円札にも印刷されていますね。
▷ColBaseでR-220「琉球首里城」を見る

こちらは、明治時代に撮影された守礼門。門の中央上部には「守禮之邦」と掲げられているのが古写真でもはっきりと分かります。


門中央の「守禮之邦」文字は右から左に向かって書かれています。

那覇市の首里城公園内に建っている守礼門、実はこの古写真に映っている守礼門とは異なります。 残念ながら古写真の守礼門は戦争により焼失しており、私たちが現在見ることができる守礼門は昭和33年(1958)に復元されたものです。
古写真で明治時代の守礼門に思いを馳せつつ、実際に沖縄に行った際には古写真と現在の守礼門を並べて撮影してみるのも面白いかもしれません。

このほかにも、ColBaseには首里城の古写真が多数あります。
例えば、こちらは首里城正殿。この写真も明治時代に撮影されたものです。


R-226「琉球首里城」(首里城正殿)首里城といったらやはりここのイメージが強いでしょうか。
▷ColBaseでR-226「琉球首里城」を見る

古写真に映る明治時代の正殿も、残念ながら戦争で焼失しており、私たちが見たことがある正殿は平成4年(1992)に復元されたものでした。そして、その平成に復元された正殿も令和元年(2019)10月に起きた火災により、正殿を含む9施設が焼失してしまい、現在は令和の復元作業が行なわれています。
新しく正殿が復元されたら実際に見に行きたいですね。

首里城公園公式HP [http://oki-park.jp/shurijo/]

〈京都〉
さて、次は明治5年(1872)の京都へ行ってみましょう。
こちらの立派な建物。どこかで見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。


R-1018「京都御所紫宸殿」即位式などの儀式が行なわれる場所でした。
▷ColBaseでR-1018「京都御所紫宸殿」を見る

こちらは京都御所の紫宸殿(ししんでん)です。
じっくり観察してみると、中央に掲げられた「紫宸殿」の文字や「左近の桜」も見えることに気づきましたか?


「紫宸殿」


「左近の桜」植え変わっているので代替わりしています。

この古写真に映る紫宸殿は撮影された当時からかわることなく、今も京都御所の一般参観コースから見ることができます。

宮内庁 京都御所施設案内 紫宸殿 [https://sankan.kunaicho.go.jp/multilingual/kyoto/place07.html]

そして、古写真では普段私たちが入ることのできない部分も見ることができます。


R-1021「京都御所紫宸殿」
▷ColBaseでR-1021「京都御所紫宸殿」を見る

これは、紫宸殿内部を撮影したもの。梁(はり)の中央部分には天皇家を象徴する菊紋がみえますね。


梁にみえる菊紋

このほかにも、参観コースからでは見ることができない建物も古写真で見ることができます。
こちらは参内殿(さんだいでん)とその門。


R-1381「京都御所参内殿」
▷ColBaseでR-1381「京都御所参内殿」を見る

古写真に貼られている紙にも書いてあるように、親王や大臣が参内する際に使った場所です。
参内殿は、第二次世界大戦中、空襲による延焼を防ぐ建物疎開により取り壊され、今は更地になっている御台所跡の裏側にあります。参観ルートに含まれないため普段わたしたちは見ることができませんが、古写真であればこのように見ることができます。

宮内庁 京都御所 参観案内 [https://sankan.kunaicho.go.jp/multilingual/kyoto/index.html]

〈奈良〉
最後は明治5年(1872)の奈良へ行ってみましょう。

奈良といえば、思い浮かぶのは東大寺でしょうか?それとも鹿…?
明治時代の東大寺はこのようになっていました。


R-1392「東大寺南大門」
▷ColBaseでR-1392「東大寺南大門」を見る


R-1394「東大寺大仏殿」
▷ColBaseでR-1394「東大寺大仏殿」を見る

今は綺麗に整備され石畳になっている部分に草木があるため、少し雰囲気が違いますが真っ直ぐ大仏殿へ伸びる道は変わりませんね。

華厳宗大本山 東大寺公式HP [https://www.todaiji.or.jp/]

そして、奈良公園やその周辺の寺社仏閣に行くと必ず目にする鹿。


R-1203「春日の鹿」 カメラ目線…?
▷ColBaseでR-1203「春日の鹿」を見る

ちゃんと古写真にも明治時代の鹿が映っています。カメラに興味をひかれているのでしょうか、カメラ目線に見えますね。

ここまで紹介してきた古写真のなかで、紫宸殿と鹿の写真は2枚対のような見慣れない形をしていましたね。
これはステレオ写真といい、ほんの少しだけ撮影範囲がずれた2枚の写真が並んでいます。
この2枚の写真を左右の目で別々でみると、立体的に見える仕組みになっています。(ステレオビュワーという装置もあります。)


『万国写真帖』の眼鏡(ステレオビュワー) 現代のVRゴーグルみたいな形をしていますね。

実は装置がなくても、立体視の「平行法」や「交差法」をすれば立体的にみることが可能です。
平行法:左右を分けるように真ん中に紙を立てて、左の写真を左目、右の写真を右目で見るようにして、ぼや~っと眺めていると浮かび上がってきます。
交差法:左の写真を右目、右の写真を左目で寄り目のようにして、ぼや~っと眺めていると浮かび上がってきます。
なかなかうまく見えない方もいらっしゃるかと思いますが、頑張りすぎて目が痛くならない程度に、試してしみてくださいね。(得手不得手でしょうか、筆者は平行法なら見えますが交差法はうまくいきません…。)

さて、ここまで東京国立博物館が所蔵する古写真を、タイムトラベルをしながらご紹介してきました。

ColBaseには今回紹介した古写真以外にも、法隆寺や興福寺、伊勢神宮などの寺社仏閣や、日光や名古屋城、蒲生城など日本各地で撮影された古写真が掲載されています。
特に、愛知・三重・京都・奈良の寺社や京都御所の古写真は、明治5年(1872)に当時の政府によって行なわれた近代初の文化財調査「壬申検査(じんしんけんさ)」時に撮影されたもので、重要文化財に指定されています。


ColBase検索画面

今回紹介したような古写真は、ColBaseトップ画面の詳細検索から「分類」→「写真資料」を選択することで調べることができます。分類を選択せずに、フリーワード欄に「首里城」や「京都御所」と入力してみると、古写真以外の文化財も検索できます。

▷ColBaseで古写真を見る

ColBaseに掲載されている古写真を見て、家にいながらタイムトラベルをしたり、その地を実際に訪れたときには古写真と同じ角度を探して写真を撮ったりしてみるのはいかがでしょうか。

また、ColBaseに掲載されている画像は、「出典:ColBase(URL)」や、トリミングなどの加工をした場合は「出典:ColBase(URL)加工して利用」など、出典を明記すればTwitterやInstagramなどのSNSへの投稿もOK!
ぜひ、さまざまな場面で利用してみてくださいね。

〈ぶんかつ〉Twitter・Instagramでは、昨年の「#ColBaseで国宝展を楽しもう」に続いて、「#ColBaseでひなまつりを楽しもう」というプチ企画を行なっておりました。今月もプチ企画を行なう予定ですので、いいねやリツイートでの反応をお待ちしております!

〈ぶんかつ〉デジタル資源担当では、運用管理するColBaseやe国宝 [https://emuseum.nich.go.jp/] といった文化財のデータベースを、みなさまに気軽に親しんでいただけるようなアイディア提案を今後も発信していく予定です。お楽しみに。

カテゴリ: 文化財の情報