ぶんかつブログ

古代出雲歴史博物館の「特別展 ハニワの世界へようこそ」

埴輪(ハニワ)好きの河野です。東京国立博物館で日本考古(主に古墳時代)を担当しています。

埴輪や古墳は今も昔も人気を博しておりますが、その埴輪や古墳ファンの方に必見の展示がはじまりました!

令和4(2022)年7月1日(金)~8月28日(日)の間、「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」が、島根県の出雲大社すぐそばの古代出雲歴史博物館にて開催されております。

▷「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」の開催概要をみる


「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」のチラシ

本展は、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が所蔵する各地域ゆかりの文化財を貸し出す「国立博物館収蔵品貸与促進事業」による、令和4年度の展覧会です。

東京国立博物館(トーハク)からは、埴輪9件の文化財をお貸し出ししています。
地元である島根県松江市岩屋後古墳の出土品4件や、重要文化財で65円切手のモチーフにもなった著名な馬形埴輪など、トーハクでも考古展示室で展示すると人気な埴輪たちです。


埴輪 両手を挙げる女子 古墳時代・6世紀 島根県松江市 岩屋後古墳出土 東京国立博物館蔵


重要文化財 馬形埴輪 古墳時代・6世紀 埼玉県熊谷市上中条日向島出土 東京国立博物館蔵

本展は、全体的に緑色の壁紙をつかった展示室で、あたかも夏の時期、古墳にやってきたような錯覚をしてしまいます。そこにはたくさんの埴輪が来館者をお出迎えしてくれていました。


展示室の様子

自称埴輪好きにもかかわらず恥ずかしや。。。。今回の展示をみてビックリしたのは、知らない、見たこともない埴輪がいっぱいあったことです。島根、鳥取、そして岡山北部の埴輪がずらりと並んでおり見応えがあります。なかでも、鳥取県大山町の猿の埴輪は、研究者でも知っている方はほとんどいないのでは。そのようなレアな埴輪もご覧になれます!


猿形埴輪 古墳時代・5世紀 鳥取県大山町 ハンボ塚古墳出土 鳥取県大山町蔵

ただ、この埴輪、猿かどうかは学芸員の中でも意見が割れているようで、その本音がキャプションに書かれていました。しかも、「自信なさげな表情度」「ゆるカワ度」「レア埴輪度」などの5段階評価のレーダーチャートがあるではないですか!また、このレーダーチャートの項目は、各埴輪で異なっており、埴輪の個性がイメージしやすくなっています。これは数多く展覧会を見てきた私のなかで衝撃で、かなり画期的な表現手法かと思いました。しかも担当学芸員のお顔が、そっくりです!


猿形埴輪のキャプション

そこで気になるのはトーハクの埴輪です。島根県松江市の岩屋後古墳から出土した埴輪は、4体でひとつの独立ケースに展示されておりました。その中で、一番左の両手を挙げる女子は、「見てるとハッピーになる度」が5段階評価の5です。これは納得です。また、チャームポイントが「アメリカ滞在歴があり、実は英語が得意」とあるではないですか。なんとこちらの埴輪、英語が得意とは知りませんでした!


島根県松江市岩屋後古墳出土の埴輪


両手を挙げる女子のキャプション

じつは裏話があって、こちらの埴輪は1960年に日米修好通商条約締結100周年を記念してアメリカにて、「はにわ展」を開催したときに出品されたものなのです。トーハクの埴輪を中心に、アメリカで5つの会場を巡回しました。アメリカ「はにわ展」の様子は、今回の展示で1コーナーを設けて紹介されております。なるほど、英語が得意というのも納得です。

本展は、埴輪そのものをご覧いただき、それだけでも充分に満足できますが、このようにキャプションを見て心おどらせることもできます。夏休み中の展覧会ですので、小学生や中学生をはじめ、さまざまな世代にとって楽しめる展示だと感じました。

次回も引き続き、特別展「ハニワの世界へようこそ」をご紹介いたします。絶妙にデフォルメされた姿や豊かな表情など魅力的な埴輪がいっぱい。お気に入りの埴輪が見つかるかも? 第二弾もお楽しみに!

開館15周年記念 特別展「ハニワの世界へようこそ」

会期 2022年7月1日(金)~8月28日(日)

会場 島根県立古代出雲歴史博物館 (〒699-0701 島根県出雲市大社町杵築東99番地4)

島根県立古代出雲歴史博物館・公式サイト https://www.izm.ed.jp/