ぶんかつブログ

インタラクティブに日本美術を楽しめる体験型デジタル年表

本年6月22日(火)に東京国立博物館(トーハク)本館1階にオープンした「日本美術のとびら」。
今回は、この部屋でお楽しみいただける体験型コンテンツ「日本美術のデジタル年表」を紹介します。


トーハク本館1階(特別3室)「日本美術のとびら」

「日本美術のとびら」は、トーハクに来館されたお客様に最初に訪れていただきたい場所として、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が全面的にプロデュースしました。高精細複製や映像で構成される、「みる」「たのしむ」「かんじる」という3つのコーナーにより、日本美術を直感的に楽しみ、文化財を身近に感じていただくための展示スペースです。なかでも、コーナー2 「たのしむ〈日本美術のデジタル年表〉」は、インタラクションの機能を搭載し、遊びながら日本美術の歴史を体感いただけます。


「日本美術のデジタル年表」を操作する様子

幅14メートルの巨大スクリーンに映し出されるのは、縄文時代から江戸時代に至る日本美術の流れ。
屏風に見立てた画面には、各時代を表す歴史的背景が描写され、そのなかに、「みんなが見たいトーハクの名品16点」が配置されています。スクリーンの前には各作品と連動した「わくわくポイント」があり、ここで決まった動作を行なうとセンサーが体の動きを認識し、作品画像を回転させたり、拡大したり、ページをめくったりすることができます。コロナ禍を考慮した非接触によるコンテンツである点も注目です。


床面に設置された足跡マークの「わくわくポイント」。
QRコードからColBase(国立博物館所蔵品統合検索システム)[https://colbase.nich.go.jp/?locale=ja]にアクセスして、詳しい解説を読むこともできます。

年表の冒頭を飾るのは、縄文時代の「火焔型土器」。作品のわくわくポイントに立つと、スクリーン上のアイコンが動き出し、人々が土器を煮炊きに使用している様子や、作品画像がポップアップされます。

「火焔型土器」のポップアップ画面

さらに、「両手を上げてみよう!」という表示に従い体を動かすと、縄文時代につくられた他のさまざまな土器が周囲に浮かび上がります。縄文時代の土器が火焰型だけでなく、色んな形があるということを直感的に知ることができる仕組みになっています。

「火焔型土器」のインタラクション画面

ほかにも、平安時代のコーナーでは「古今和歌集(元永本)」をご覧いただけます。空中で左手をスライドさせると、映し出された作品のページをめくることができます。ページが変わるたびに料紙の装飾がキラキラと外にあふれ出るような演出も施されているので、思わずどんどんページをめくってしまいます。

「古今和歌集」のインタラクション画面

「古今和歌集」を操作する様子

江戸時代のコーナーでは「洛中洛外図屏風(舟木本)」がエントリー。手を前にかざして、白い枠内にマークを動かすと、その場面が大きくクローズアップされ、生き生きとした人々の暮らしや都市の賑わいの様子をご覧いただけます。

「洛中洛外図屏風」のインタラクション画面

また、この年表では、毎時00分と30分に、スクリーン全体を使った約2分間のオープニングムービーが流れます。最新のモーショングラフィックス技術が駆使された映像は、スタイリッシュかつドラマチック。年表内に配置された16作品を中心に、日本美術の流れを感覚的に把握できます。


オープニングムービー(冒頭画面)

 

オープニングムービー後は、元の体験モードに戻りますが、じつはこの背景画面、ご覧いただく時刻によって、「昼」「夕」「夜」とバージョンが変化するのです。夜間開館が再開されたら、ぜひ確認してみてください。


昼バージョン(9:30~15:00)。晴れた空に、日本の歴史的風景が映えます。

 


夕バージョン(15:00~18:00)。空が黄金に染まり、月が現れます。


夜バージョン(18:00~)。夜空のなかで、月の輝きが増します。

さて、この年表では、縄文時代から江戸時代までを対象とし、紹介する作品も絵画・彫刻・工芸・書跡・考古など実にさまざまです。これら異なるジャンルを一つの年表にまとめあげるのはなかなか至難のワザですが、幸いにトーハクには、それぞれの分野を専門とする研究員が揃っています。今回の年表では、各分野の研究員と何度もやり取りを重ね、背景描写や映像などをきめ細かくチェックしました。


(左)修正前、(右)修正後 どこが変わったかわかりますか?
正解は本文をご参照ください。

 

例えば縄文時代の背景描写では、当初は「槍投げ」の人物が表されていましたが、考古担当の研究員から、「槍投げ」は旧石器時代の狩猟方法であるとの指摘を受け、「弓矢」の人物のみに修正したり、「木の実拾い」の人物を追加したりしました。また土偶のアイコンが稲作風景にかぶってしまうのも時代的に齟齬があるため、配置場所を調整するなど、細かい部分まで目配りしています。

このように、デザイナーさんから届くグラフィックの確認・修正を何度も繰り返し、描かれたモチーフがその時代に適さないものであった場合は別のモチーフと差し替えたり、より時代に合致するようデザインに微修正を加えたりと、細部にまでとことんこだわり抜いて作られているのです。

おかげで、遊び心いっぱいのエンターテインメント的要素は保持しつつも、単なるアミューズメントではない、相当にアカデミックな内容に仕上がりました。ちょっと大げさに言うと、トーハク研究員の叡智がつまった年表なのです。トーハクへご来館の際は、ぜひ体験してみてください!

▷関連ブログ「常設展示「日本美術のとびら」がトーハク本館にオープン!」の記事を読む

日本美術のとびら

▷「日本美術のとびら」開催概要をみる

会場:東京国立博物館 本館特別3室 (東京都台東区上野公園13-9)

開館時間:9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで)
※特別展の開館時間は、別途ご確認ください。

休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
12月14日(火)、年末年始(2021年12月26日(日)~2022年1月1日(土・祝))、2022年1月4日(火)。その他臨時休館あり。

観覧料金:(総合文化展)一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料
※総合文化展観覧料または開催中の特別展観覧料(観覧当日に限る)でご覧いただけます。
※入館にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要です。

詳細はトーハクウェブサイトをご確認ください。

カテゴリ: 展示・イベント