ぶんかつブログ

千葉県立中央博物館で貝塚王国、千葉の縄文時代を探る

みなさま、縄文ファンの間で話題の「ちばの縄文」展はご覧になりましたか?

縄文貝塚が密集する千葉県は、なんと貝塚数日本一!近代考古学の黎明期より研究者の注目を集めてきました。

このブログでは、千葉で発掘された考古遺物を通して縄文時代の生活を辿る展覧会「ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし」(千葉県立中央博物館、~12/13まで)をご紹介いたします。

▷「ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし」の開催概要をみる

本展は令和2年度東京国立博物館収蔵品貸与促進事業のひとつで、トーハクからは加曽利貝塚(かそりかいづか)、余山貝塚(よやまかいづか)など、千葉県内から発掘された考古資料44件をお貸し出ししています。


季節の木々が美しい、青葉の森公園内に位置する千葉県立中央博物館。千葉駅からのアクセスは、京成バス(「千葉大学病院」/「南矢作」行き)に乗り「中央博物館」での下車が便利です。

この度は特別に、展覧会担当者である千葉県立中央博物館 上席研究員・田邉由美子さんに、本展の見どころをご案内いただきました。


動物考古学がご専門の田邉由美子さん。東京国立博物館よりお貸し出し中の考古資料前にて。

貝塚王国・千葉を象徴するにふさわしい「貝層剥ぎ取り断面」から展示がスタート。
酸性土壌が多い日本列島では、有機質遺物は溶けてしまい多くの場合残りません。しかし、貝殻に含まれるカルシウム分が酸性の土壌を中和するため、貝塚からは土器や石器のみならず、骨や植物など、縄文人の暮らしを解明する遺物が出土します。


「貝層剥ぎ取り断面」(縄文時代中期、東金市・大網白里市養安寺遺跡出土、公益財団法人千葉県教育振興財団蔵)
常設展示「房総の歴史」の巨大な「貝層剝ぎ取り断面」(縄文時代中期、千葉市有吉北貝塚、千葉県教育委員会蔵)も併せてご覧ください!

このため、多くの貝塚が現存する千葉では、明治時代から遺跡の発掘が盛んに行なわれてきました。こうした発掘資料はトーハクに数多く所蔵されており、千葉における近代考古学のはじまりを語る上で欠かせない重要な資料群と位置づけられています。


明治時代の発掘報告記事とともに展示中の銚子市余山貝塚出土資料(東京国立博物館蔵)

なかでもご注目いただきたいのがこちら。


「土偶頭部」(縄文時代(後期)・前2000~前1000年、銚子市余山貝塚出土、吉野長太郎氏寄贈、東京国立博物館蔵)

鮮やかな赤い彩色が残り、顔周りに髭(あるいは入れ墨)のようなポツポツとした穴がみえる土偶の頭部。キリリと上がった眉が勇ましくも、お顔の輪郭線は丸く愛らしい印象を受けます。
千葉から遠く離れた北海道で出土した国宝「中空土偶」(縄文時代後期、函館市著保内野遺跡出土、北海道・函館市蔵)をも想起させる造形です。

なお、トーハクの通常の貸与規定では、1つの展覧会に対して貸し出し可能な作品数は「最大20件まで」とされていますが、貸与促進事業の「大規模貸与」の枠では、50件までの貸し出しが可能。今回は、千葉の考古資料44件がまとまったかたちで里帰りを果たすことができました。これは、令和2年度事業のうち最多の貸与件数です。

千葉出土の考古資料をトーハクが数多く所蔵していることに驚くお客様も多いとのこと。

さらに本事業では、国立博物館が貸し出す文化財にかかる輸送費を、ぶんかつが負担します。
「トーハクからの借用作品については輸送費がかからなかった分、他機関からより多くの考古資料をお借りすることができました」と、田邉さん。

続いて、田邉さんのご専門でもある貝塚出土の動物遺存体(食料や道具類に用いられた動物の骨、角などの遺物)についてご紹介いただきました。


「動物遺存体」(縄文時代中期、千葉市有吉北貝塚出土、千葉県教育委員会蔵)

「動物遺存体 イルカ類頭蓋骨・椎骨」(縄文時代後期、館山市大寺山洞穴出土、千葉大学文学部考古学研究室蔵)

貝や魚、シカやイノシシのほか、サル、イルカにウミガメやクジラなど、千葉市有吉北貝塚からは多様な動物の骨が出土しており、こうした例から縄文人の食生活を探ることができます。

とりわけ、太平洋沿岸に位置する千葉の遺跡から、イルカの骨が多く出土している点が特徴的です。銛や釣針の役割を果たす骨角器も併せて発掘されているため、千葉の縄文人もイルカ漁を行ない、貴重な食料源としていたのでしょう。

イルカは特別な存在であったのか、千葉市有吉南貝塚からは腰飾りとしてイルカ類の下顎を身につけた人骨が出土しているそうです。

最後に、展覧会の締め括りとして、千葉県内における最新の出土状況が紹介されています。


「ちばの発掘最前線!」のコーナー

船橋市、市川市、そして柏市の遺跡から出土した40点以上もの考古資料がずらりと並ぶ様は壮観です。
中でも、谷底に形成された市川市道免き谷津遺跡(どうめきやついせき)は、水浸しで空気と遮断されていたため、漆塗りが残った木製品が多く出土しているとのこと。
美しい朱漆が残る縄文時代の竪櫛は必見です。


「漆塗結歯式竪櫛」(縄文時代晩期、市川市道免き谷津遺跡出土、千葉県教育委員会蔵)

観覧後は、館内のレストラン「喫茶 あおば」でのご休憩がおすすめ。
ぜひ、「ちばの縄文」展のコラボメニュー「環状貝塚カレー」、「縄文パフェ」をご賞味ください。
どんぐりに見立てたウズラの卵をトッピング。貝の出汁がよく効いた、縄文展にふさわしいメニューです。


環状貝塚カレー

なお、ご来場の皆様には、展覧会のリーフレット(A4サイズ、24頁)が無料で配布されます。
詳しい展示内容が収録されているので、これで展覧会の復習もバッチシですね!

展覧会リーフレット「ちばの縄文」

千葉の縄文時代を探求し、その美と暮らしに迫った「ちばの縄文」展は12月13日(日)まで。
みなさま、この秋はぜひ、千葉県立中央博物館へお出かけください。

ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし

2020年10月10日(土)~2020年12月13日(日)

千葉県立中央博物館(〒260-8682 千葉県千葉市中央区青葉町955-2)

※一部の資料を除き、展示室内では写真撮影が可能です。

公式サイト http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/index.html

公式Twitter https://twitter.com/chiba_chuohaku

カテゴリ: 文化財の貸与